東海連珠会

開局規定

 交互に着手するゲームのほとんどは先に着手する先手側が有利です (*)。 囲碁では先手側の有利さを解消する目的で“コミ”という制度を導入しています。 将棋では特にそのような配慮はされていませんが、 プロの多くの実戦結果からは僅かながら先手側の勝率が良いとの結果が出ています。
((*) どうぶつしょうぎのように、 後手必勝であると解析されている例もあります。)

 連珠は、“先に五を作る”ゲームで、短手数で終わることもあり、 先手側 (黒) の有利さは囲碁や将棋よりも随分と大きいものです。 黒の有利さを減少させるために、黒だけに三々等の禁手がありますが、 実はまだ不十分です。 そこで、黒が有利にならないよう、 ゲームの開始直後の数手について、 黒の着手を制限する方向で開局規定が設けられています。

 連珠の序盤は戦場が中央から周囲へ広がるために、 同じ局面が出現しやすいという弱点がありますが、 開局規定の存在によって序盤の様相が非常に幅広くなるという利点も出てきます。

 高段者が使う開局規定を初心者の方が使うことには無理があり、 上達を妨げる可能性もあります。 できれば指導者のアドバイスに従い、 自由打ち → 珠型交替打ち → 題数打ち → 四珠交替打ち、 と力量にあわせながら変えていくのが良いと思われます。

石を握る

 開局規定は手順として説明されますが、その最初の手順として 「先手・後手を決める」、 「仮先・仮後を決める」、あるいは 「提示者と選択者を決める」作業があります。 この作業は通常次に示す “石を握る”方法で行なわれます。

  1. 一方が黒石、他方が白石を選びます。 (どちらが黒石を選んでも構いません。 上位者あるいは年長者が白石を選ぶとするのも1つの方法ですが、 気にする必要はありません。)
  2. それぞれが相手に分からないように石をいくつかずつ握ります。
  3. 握った石を同時に見せ、その合計が奇数か偶数かを判断します (通常は2個ずつ取り除いていき、石が残らないか1個残るかで判断します)。
  4. 合計が奇数なら黒石を握った側が先手/仮先/提示者となります。 合計が偶数なら白石を握った側が先手/仮先/提示者となります。

 他に優先すべき事情がない限り(*)、 これが 以下に示す各開局手順中の 0. に相当 します。 開局手順中のすべての作業が終了した後は、 その時の手番の人から交互に自由に着手することになります。
((*) 数局の対局をする公式棋戦等では、 先手/仮先/提示者となる割合の公平化を目指し、 それまでの対局を考慮して運営者が決めることもあります。)

自由打ち

 連珠のルールで定められたこと以外の制約を受けずに自由に打ち進める方法です。

  1. 黒を持つ先手と白を持つ後手を決めます
  2. 黒は最初の1手を盤の中央 (天元) に打ちます
  3. その後は白・黒・白・……と交互に自由に着手します

 黒の初手に続く白の初手は天元の1路横か1路斜めに打つことが多いのですが、 これはルールではなく、そうしないと黒が一層有利になってしまうからです。

 そのように白の初手を打つとして、 1路横も1路斜めの場合にも4個の対称形の位置があります。 その場合、白の席から見て近い側の1路横、近い側の左斜めに打つことが、 ルールでも強制でもありませんが、 そのようにした方が望ましいと多くの人に思われています。

 連珠を始めたばかりの初心者向きの開局規定です。 自由に連珠を楽しんでもらうとともに、 黒が圧倒的に有利になる打ち方があるのでそれを学んでもらう意味もあります。 ここで学んだ攻めや防ぎの手筋 (手順ではありません) とそれを応用する力は、 他の開局規定に進んだ時にも大いに役立つ筈です。

珠型交替打ち

 正式名は“珠型交替五珠自由打ち”です。 一方が最初の3手を示し、他方が黒を持つか白を持つかを選択できるようにして、 黒・白のバランスを保とうとする方法です。

  1. 仮先・仮後を決めます
  2. 仮先は最初の3手を決められた珠型 (基本珠型) の中から選び盤上に打ちます (基本珠型は、盤の中央に黒、その1路横または斜めに白、天元から1間以内に黒の 3つの石からできる形で、計26種類あります)
  3. 仮後はそれを見て自分が黒を持つか白を持つかを選択します
  4. 開局作業はここまでで、 その後は白となった者が白4、黒となった者が次に黒5と、交互に自由に着手します

 連珠ルールブックには記載されていませんが、 初心者が自由打ちから次の段階に進む時に使うのが良いとされている開局規定です。

2題打ち

 正式名は“珠型交替五珠2題打ち”です。 名人戦等の公式戦で以前に使われていた方式です。

  1. 仮先・仮後を決めます。
  2. 仮先は基本珠型の中から1つを打ちます。
  3. 仮後は、仮先の示した珠型を見て、黒番か白番かを選択します。
  4. 白番に決まった対局者は、白4を自由に打ちます。
  5. 黒番は黒5の候補を2ヶ所打って、白番に示します。
  6. 白番は示された2ヶ所のうち一方を黒5として盤上に残し、 他方の黒石を黒番に返します。
  7. 開局作業はここまでです。その後は白6から交互に自由に打ちます。

 先手必勝とまでは言えなくとも、多くの対局経験から 先手有利あるいは先手が打ちやすいと思われている珠型が多くあります。 そこで黒の5を自由に打てなくして黒の有利さをなくそうとするのがこの開局規定です。 黒番は黒の5として打ちたい箇所を2つ示し、 白番は自分に都合の良い方を選ぶことができることで、 黒の打ちやすい珠型でも黒・白対等に戦えるようにしようとするものです。

 しかし、高段者レベルの眼で見ると、 黒5を2つ示してもなお黒が打ちやすい珠型や、 黒5を自由に打っても白は十分に戦える珠型があります。 そのため名人戦等のハイレベルの棋戦では、 提示される珠型は、長星、瑞戦、松月、斜月、疎星等の限られたものに 偏る傾向がありました。 この欠点を解消しようとするのが次に示す開局規定です。

題数打ち

 正式名は“珠型五珠題数提示選択打ち”ですが、 海外では“ヤマグチルール”とも呼ばれます。 日本の名人戦では2009年度から採用された方式で、 他の公式戦でもその前後から使われています。 世界選手権戦等でも使われています。 題数とは、黒5の候補として示す着手点の個数のことで、 珠型の特性に応じて題数を変化できるようにしています。 前述の2題打ちは題数を2に固定した題数打ちであるとも言えます。

  1. 提示者と選択者を決めます。
  2. 提示者は基本珠型の中から1つを打ち、黒5の題数を提示します。
  3. 選択者は提示者の示した珠型と題数を見て、黒番か白番かを選択します。
  4. 白番に決まった対局者は、白4を自由に打ちます。
  5. 黒番は黒5の候補を(1)で提示された題数だけ打って、白番に示します。
  6. 白番は示された題数の候補のうち1つを黒5として盤上に残し、 それ以外の黒石を黒番に返します。
  7. 開局作業はここまでです。その後は白6から交互に自由に打ちます。

 珠型によって題数を変えることができますので、 2題打ちではまず見られなかった珠型も多く現われることになります。 例えば、浦月や花月では題数を5や6にすることでよく打たれるようになりました。 また、疎星や流星は題数1で打たれることがあります。 渓月や峡月は自由打ちでも黒有利と言える程度ですが、 意外にも題数を大きくしても白が有利になるわけではないことが分かってきています。 最近の棋戦では6〜8題が示されることが多いようです。

 題数打ちで対局を始めることによって出現する局面の幅は大きく広がり、 連珠の魅力は一層大きくなったと思われます。

四珠交替打ち

 “ソーソロフルール”とか “エストニアルール”とも呼ばれます。 2017年の国際戦から、題数の上限を8とする ソーソロフ8・ルールが採用され、 国内でも名人戦等のトップ棋戦で採用されています。

 題数打ちでは、珠型と題数との組を判断材料として黒・白を選択しますが、 ここでは白4までの形と題数との組まで進められ、 その組合せの数は格段に大きくなっています。 また、どちらの対局者がどのような行動・判断をするかもいくらか複雑になっています。 連珠ルールブックに示される説明文は手順として不明瞭なので、 ここでは東海連珠会の示す手順説明文を載せておきます。

  1. 珠型提示者と選択者を決めます。
  2. 珠型提示者は基本26珠型の中から1つを打ちます。
  3. 選択者は次のいずれかを選びます。
     (2a) 自身を白4・題数提示者、相手を黒白決定者とする。
     (2b) 相手を白4・題数提示者、自身を黒白決定者とする。
  4. 白4・題数提示者は、白4を自由に打ち、黒5の題数を1〜8の範囲で示します。
  5. 黒白決定者は、(3)で示された白4までの形と題数を見て、 黒番か白番かを決定します。
  6. 黒番に決まった対局者は、黒5の候補を(3)で提示された題数だけ打って、 白番に示します。
  7. 白番は示された題数の候補のうち1つを黒5として盤上に残し、 それ以外の黒石を黒番に返します。
  8. 開局作業はここまでです。その後は白6から交互に自由に打ちます。