「遅延手」について

遅延手(ちえんて) とは、 同じ勝ち筋ながら、より短い手数の勝ち手順が別にある手を言います (この概念を表わす適当な用語を知りません。 ここでは仮にそのように呼ぶことにして議論を進めます)。

追詰め問題の 約束事 として、

というのがあり、 同じ勝ち筋であれば長い手数の手順を選んではいけないことになります。 対局連珠では勝ちになればよいので問題にならないことですが、 追詰め詰連珠では守らねばならない約束事になっています。 なお、異なる勝ち筋の勝ち手順を表わす 余詰め とは異なるものです。

例bのような遅延手が生じない問題に美しさを感ずる詰連珠作者もいることは事実です (筆者はその1人です)。 しかし、遅延手での勝ち手順を含む問題が、 追詰め問題としふさわしくないというわけではありません。 むしろ作者側は、例cのような遅延手を含む問題を作り、 失敗解答をひそかに期待しているかもしれません。

b 05 05 12 12 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・例a・ロ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・●○イ・・・・・ ・・・・・・・●●・A・・・・ ・・・・・・○●・○・・・・・ ・・・・・・●○・・・・・・・ ・・・・・○・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
b 05 04 12 11 ・・・・例b・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・AB・●・・・・ ・・・・・・・・●○・・・・・ ・・・・・・○○●・○・・・・ ・・・・・○●●●・C・・・・ ・・・・・・・・○・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
B 04 03 11 11 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・例c・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・イ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・○○・●・・・・・ ・・・・・・○・○B・・・・・ ・・・・○○●●C●・・・・・ ・・・・●・●A・・・・・・・ ・・・・・・・・・ロ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・

例a:

最も単純な遅延手の例です。 “Aの三後(イロ)で四三勝ち”が解ですが、 イ・Aと四・三を作ってからのロの四三勝ちの勝ち手順もあります。 単なる 手順前後 に見えますが、 「五を作る直前の四の連続は1手と数える」というルールにより、 前者は後者より1手短く、 後者は遅延手の手順であるため選ばれるべき手順ではありません。

例b:

初心者が対局で指しやすい遅延手の例です。 解は「A後BまたはCの四三勝ち」ですが、 B・Aと四・三を作ってからのCの四三勝ちという平凡なヒキ勝ち手順もあります。 同じ勝ち筋ながら、実際上も手数の計算上も1手の違いがあり、 後者は遅延手を含む手順となります。

例c:

気付きにくい遅延手の例です。 解はA・Bの順に三をヒキ、次にCの四三勝ちです。 これを先にBの三をヒクと、白イの四ノビ後にロの夏止めという 詰連珠特有の“強防”にあい、手数がノビてしまいます。

イの四ノビを無駄にしないためにロと夏止めをしており、 ロ止めの後に四追いが残っていないので、イの四ノビは無意味でなく、 その分の手数が増えます。

この手は遅延手?

例dの図を検討してみます。 「最短手順の追詰めは?」という課題での追詰め問題でありがちな例と思えるものです。

b 03 04 13 12 ・・例d・・・・・・・・・・・ ・・・・○・○・・・・・・・・ ・・・・・●●・●○・・・・・ ・・・・・・●○・●・・・・・ ・・・・・○●●○・●・・・・ ・・・・・・・○・●・○・・・ ・・・・・・・・・○・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
b 03 04 13 12 ・・解1・・・・・・・・・・・ ・・・・○・○A・・・・・・・ ・・・・・●●・●○・・・・・ ・・・・・・●○・●・・・・・ ・・・・03○●●○・●・・・・ ・・・・・・・○・●・○・・・ ・・・・・・B・02○・・・・・ ・・・・・・・01・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・
b 03 04 13 12 ・・解2・・・・・・・・・・・ ・・・・○・○A・・・・・・・ ・・ロ・イ●●・●○・・・・・ ・・・・・・●○・●・・・・・ ・・・・01○●●○・●・・・・ ・・・・・ニ・○・●・○・・・ ・・・・・・ハ・・○・・・・・ ・・・・・・・ホ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・

1つの勝ち手順(解1)として、 1の三後に3でAまたはBの両ミセがあります。 もう1つの「より短い」勝ち手順(解2)は、 1と打ってAまたは(イロハニホ)とするものです。

前者は遅延手でしょうか。以下は筆者の見解です。

解2ではイ・ロの四ノビを使っていますが、解1では使っていません。 この意味で解1と解2は同じ勝ち筋とはみなせません。 なお、イの点に白石があるとしても解1は成立しますが、解2は成立しません。 また、イの点に白石がある場合、Aの四ノビの遅延手から始める勝ち手順はありますが、 解1より短いあるいは同じ長さの勝ち手順はありません。

こうして、解1は遅延手でなく、手数の短い解2の余詰めと考えられます。 例dの解としては解2が選ばれるでしょうが、 より少ない資源だけで勝ちを導いている解1の方が優れている、 という考え方もあり得ます。 いずれにせよ、余詰めのある問題は作者として避けるべきと考えます。