(攻め側の)「無駄手」について

その手を打っても打たなくてもその後の手順に影響がない場合、 その手を 無駄手 と呼びます (無意味な手と呼ぶこともあります)。 攻め側、防ぎ側の双方に無駄手はありますが、 今回は攻め側の無駄手について、例を見ながら検討してみます。

追詰め問題特有の約束事 (1) にあるように、
 c. 攻め側はできるだけ手数が短くなるように攻める
となっており、無駄手のある解答は正解になりません。

無駄手かどうかは簡単に判断できそうですが、 状況によっては判断に迷うこともあります。

攻め側の無駄手は、 遅延手 に似ていると言えますが、遅延手はその手を省いても勝ちはあるけれど その手は勝ちに何らかの貢献をしているのに対し、 無駄手は何の貢献もしていない、という点で異なります。

容易に判断できる無駄手の例

b 05 05 13 13 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・例a・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・●○○○・・・・・・ ・・・・・・・●・○・・・・・ ・・・・・・・●●・03・・・・ ・・・・・・・●○●○・・・・ ・・・・・・・・・・01・・・・ ・・・・・・・A・・・02・・・

例a (黒先)

“黒3後A”としていますが、 黒1は勝ち筋に何の貢献もしておらず明らかに無駄手で、 初手からの“3後A”で十分です。

b 04 05 12 13 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・例b・・・・・・・・・・ ・・・・・・・●○●・・・・・ ・・・・・・○・A・・・・・・ ・・・・・○a●●03・・・・・ ・・・・・・●○・・・・・・・ ・・・・●○●・・・・・・・・ ・・・・・●01・・・・・・・・ ・・・・・・02・・・・・・・・

例b (黒先)

黒1に対してa止めは直ちに2の四三ですので白は2と止めます。 “黒3後A”としていますが、 結局、黒1は最終的な勝ち筋に何の貢献もしておらず 初手からの“3後A”で十分です。 黒1は無駄手と言えます。

例c (黒先)

b 04 04 13 12 ・・・例c・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・○○・・●●○・・・ ・・・・・・●・○●・・・・・ ・・・・・○・●・●○●・・・ ・・・・・・●○●○○・・・・ ・・・・・●・・・・・・・・・ ・・・・○・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ b 04 04 13 12 ・・・例c解・・・・・・・・・ ・・・・・・・・03A・07・・・ ・・・・・○○・・●●○・・・ ・・・・・・●・○●04・・・・ ・・・・・○・●b●○●・・・ ・・・・・・●○●○○・・・・ ・・・・・●イ01・06a・・・・ ・・・・○・02・・・05・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・

例cの問題に対して、 例c解のように“黒7後A”と解いたとします。 黒1の三に他止めは(2イ)がありますので、白2は絶対です。 しかし例bと同様に、 黒1・白2の交換は不要で、いきなり黒3から始めても同じ勝ち筋での勝ちです。 黒7の三に白からa・bの四ノビでの防ぎを警戒しての黒5の四ノビのようですが、 白aの四で黒5のノリ手があるので、四ノビでの防ぎは不成立です。 従って黒5の四ノビは不要、つまり無駄手となります。

結局、解答図では“黒3・白4・黒7後Aの四三勝ち”とすべきものでした。

無駄手か否かの判断に迷いそうな例

b 03 04 12 13 ・・例d・・・・・・・・・・・ ・・・・・a・・○・○・・・・ ・・・・・・○・・●・・・・・ ・・・○・●・○●・○・・・・ ・・・・●○・●XY●・・・・ ・・・・・●A○●○・・・・・ ・・・・○・●●・○●・・・・ ・・・・・・0302・・・・・・・ ・・・・・・・・01・・・・・・

例d (黒先)

X点の三々禁を狙われているため、 黒1の好手(!?)で長連筋夏止めを利用してX点を解禁し、 “黒3後Aの四三勝ち”としています。

これが正解でしょうか。

実は黒1は無駄手です。 黒1を打たずに初手から黒3とした場合、 白aで禁手を狙ってもY点が四々になるためX点の横は三でなく、 X点は三々禁になりません。 こうして、正解は、黒1なしの単に“黒3後Aの四三勝ち”でした。

b 03 05 11 13 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・例e・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・●○●・・・・・ ・・・・○・○・C・・・・・・ ・・・・・○02●●B・・・・・ ・・・・●・●○○・・・・・・ ・・・・●○●○・・・・・・・ ・・・・030501・・・・・・・・ ・・・・04・A・・・・・・・・

例e (黒先)

例bを少し変えてみた図です。 やはり“B後C”の勝ちはあります。

黒1とヒイた時を考えると、白2と止めた方が長い手数となるため白は2と止めます。 こうして、初手が黒1の場合の主図は図のようになります。

初手をBとした場合と1とした場合とで別の図ができ、 これらは異なる勝ち筋と言えます。 “B後C”の方が短い手数なので、こちらが正解となるのは確かですが、 黒1の手をどう考えるかは微妙です。

黒1をヒイた後の解答者の立場で考えます。 勝ち手順を見つけ、そこではどの手も必要で 手数をこれ以上短くする方法はありませんでした。 この状況では正解を見つけたと考えてもおかしくありません。 Bから始める解とは別個のものですので、 いずれかを 余詰め (この例では図eの手順)と考えるのが自然でしょう。

例dのような問題は、解答者が正しく無駄手を認識できるか否かを問う 作成者側からの挑戦であり、ある意味で良問と言ってよいと思います。

一方の例eのような問題は、 解答者が正解と判断するそれなりの根拠があるにもかかわらず 不正解となってしまうもので、 余詰め問題と判断できそうだということからも、 好ましい問題とは言えません。